• 如風

日本版IR

2016年12月15日の参議院本会議で「IR 推進法」(特定複合観光施設区域整備法 - 平成30年法律第八十号)が成立しました。

当時のマスコミ各社の報道では、「IR 推進法」を ”カジノを含む統合型リゾート施設整備推進法案”と呼び、以後各社それぞれの立場で日本でカジノが公認されることを賛否両論紙面で展開しました。その為「IR 推進法」には常にカジノを含むがお約束の枕詞になったのです。

追って2019年3月には、特定複合観光施設区域整備法施行令 - 平成31年政令第七十二号が制定され、いよいよカジノを含む 統合型リゾート施設整備の推進に向けて官主導の一大プロジェクトが前進を始めました。

私は、ことカジノに関しては推進派でも反対派でもありませんが「(日本版)IR 」がカジノ解禁を前提としてワンパッケージで 推進に向けて法制化されたことには常々疑問を感じています。

もともと IR (Integrated Resorts) は統合型リゾートと訳され、国際会議場・展示会場・劇場・美術館・博物館・宿泊施設・商業施設・娯楽施設等が複合的に集約された区域を指すもので 必ずしも IR にカジノが付随する必要はありません。カジノを含まない「IR 推進」であれば RoI (*1)を検証したうえで各地方自治体、民間開発業者、商業施設運営企業が商業ベースで(統合型)リゾートを企画・開発・運営まで行いますから敢えて法律で語る必要は無いはずです。しかし今般 統合型リゾート開発に抱合せる形でカジノを解禁することになったがために状況は一変したのです。

先ほどの施行令を読んでみますと、第一章から第七章(+附則)まで全46条(+附則)で構成されています。そのうち、第一章のわずか1~5条までが国際会議場・展示会場・ホテル・劇場・旅行関連サービスの基準にさかれる一方、第二章~第七章まで計41条はカジノ関連の規定、基準、罪に充てられています。

(*1)RoI (Return of Investment) 費用対効果

我が国においては、刑法185条・186条(賭博及び富くじに関する罪)によって公営ギャンブルを除いた賭博行為が禁止されているので今日までカジノは存在しません。

日本政府がこの段階で刑法185条・186条を乗り越えてカジノ解禁に大きく舵を切ったのには大きく二つの理由があります。

一つ目は言うまでもなく、厳しさを増す国家財政立て直しの切り札としての財源確保、そして二つ目が2020年のオリパラ特需後も継続して訪日外国人旅行者を増やそうというインバウンド拡大構想です。

世界を見渡すと120か国以上の国々でカジノは公認されており、現在2,000~2,500か所以上のカジノが稼働しています。これら数多くのカジノの功罪がさまざま語られる中、日本がこの度の「IR 推進法」を推し進めるにあたってお手本にしたのは、同じアジアのシンガポールやマカオ、先行するラスベガスのIR成功例や韓国、ヨーロッパの老舗カジノの実例であることは明白です。

シンガポールに2010年2月にオープンしたリゾート・ワールド・セントーサと同年6月にオープンしたマリーナベイ・サンズは共に先行するアジアのIRの成功例として数々のメディアでも取り上げられています。事実、マリーナベイ・サンズが有する45,000人収容可能な MICE 施設並びにリゾート・ワールド・セントーサの MICE 施設が2010年に稼働したことで、2011年から国別の年間会議開催件数ではシンガポールが常にベスト3以内の実績を誇り、国家観光収入の凡そ25%が二つのIRによって生み出されています。とはいうものの 注目すべきは両IR共に、カジノからの収入がIR全収入の8割を占め 圧倒的にカジノに依存した収益構造になっていると言うことです。

一方カジノでは先行するマカオ、IRとしてシンガポールのサンズ、セントーサとは単純に比較することができません、何故ならばマカオの場合シンガポールと異なりIRとはいうもののカジノを有する個々の独創的なホテル群を各々 MGMマカオリゾート、MGMコタイリゾート、ベネチアン・マカオリゾートなどと呼び統合型リゾートと言うよりカジノ・リゾート・ホテルが林立する東洋のラスベガスの様相を呈しているからです。カジノがマカオの国家財政にもたらす税収は 全歳入の凡そ8割を占め歳出のすべてをカジノからの税収で賄うことができること、即ちカジノ依存経済と言う点では前出のシンガポールのさらに上を行くスーパーカジノ的IRと言うことができるでしょう。

さて、ここまで見てきたことでカジノを公認することでどれだけの税収効果があるのかがお分かりになったと思います。極端に言えば、カジノさえあれば敢えてIRを推進して国際会議場や展示会場、ホテルや観光関連施設など作らなくとも十分に(部分的に)小規模国家の財政を支えることができるのです。

私は、ことカジノに関しては推進派でも反対派でもありません、と述べたようにある意味中立的な視点で今後日本のカジノ(失礼!IR)の展開を観察するつもりです。

​次の章では、カジノ解禁とワンパッケージとしての日本版IR誘致についてオーバーツーリズムを念頭に考えてみたいと思います。

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