如風
COVID-19と国内観光地
更新日:2020年5月18日
2019年11月に中国湖北省武漢に端を発した新型コロナウィルス(COVID-19) 型肺炎はその後も感染の広がりに衰えることなく、2020年3月7日(日本時間02:00)現在、世界92ヵ国・地域で感染者数が100,824人、そのうち3,456が死亡したと報告されています。
COVID-19は新しい型のウィルスのためワクチン、特効薬が存在せず世界保健機関(WHO) をはじめ各国の保健当局も現状では世界規模でのパンデミックを如何に抑制するかと言った限定的且つ消極的な措置を執るに留まっています。
COVID-19が世界経済に与えるネガティブインパクトのボリューム評価、殊にツーリズムマーケットが被る被害の程度及び回復までの時間等については後日ページを改めて詳細に述べる機会があると思いますので、この章ではCOVID-19の影響で突然 訪日観光客の姿が消えた国内観光地の現状を報告したいと思います。
2月6日から約一か月間オーバーツーリズムの実地調査(フィールドワーク)のため関西各地を訪れました。計画では、中国・東南アジアからのインバウンド需要がピークとなる春節期間中の各観光地における訪日観光客の動向調査、オーバーツーリズムによる負の側面の現状調査、各地の観光行政担当者との面談等を予定していましたが、春節直前の1月27日にCOVID-19の蔓延を恐れた中国政府が決定した自国民の団体ツァー禁止令、続く2月4日からのダイヤモンド・プリンセス船内における集団感染により現実はオーバーツーリズムとは真逆の状況 、即ち -「突如何の前触れもなく訪日観光客の姿が消えた観光地」を見て回ることになってしまいました。
訪問した観光地は、伊勢・鳥羽・信楽・松阪・上野 - 伊賀・奈良・津の 7か所です。そのうち、津市は三重県の県庁所在地であり、今回のフィールドワークの交通の起点としてベースを設置した場所でしたので観光地として意識したものではありませんでした。しかし意図せずに訪れた中部圏の県庁所在都市の余りに凋落した姿を目にして ”点~to~点”プロモーションに取り残された中間通過地点の現実を見せつけられた気がしましたので少し書いてみることにします。
津市は三重県中北部に位置する県庁所在地で市の海岸側を南北に市外(鈴鹿、四日市方面~ 市内~市外(松坂方面)に貫く国道23号線(通称伊勢街道)は名古屋方面と南紀方面とを結ぶ幹線道路として片側 3車線で整備され、ほぼ全ての交差点には右折専用車線が完備しており非常にドライバーフレンドリーなインフラが整えられています。この道路整備が計画された当時は関東、北陸、中部からの物流と伊勢、南紀方面への観光の幹線道路として大きな期待が込められたのですが、その後市の山側に自動車専用有料道路、伊勢自動車道が作られたことにより国道23号線は観光・物流幹線道路から生活道路レベルのものとなってしまったのです。地域の住民にとって自家用車は重要な移動手段であるため高齢ドライバーが運転する小型車が非常に多く目につくのもこの地域の特徴です、その結果、郊外には無料の駐車場を備えた大型から小型まで各種のスーパーマーケット、複合型商業施設が数多くあり地域消費の中核を担っています。
JRと近鉄が乗り入れる津駅は地域でも有数の乗降客を誇るターミナル駅ですが、駅前には 3階建ての小規模商業テナントビルとビジネスオフィスビル、ビジネスホテルがあるだけで市内外からの集客力はほとんど無いように感じました。地元の方によると、津市の中心地は駅から約1km離れた国道23号線沿いの岩田橋から塔世橋までの丸之内エリアであるとのことですが ターミナル駅からは徒歩で15分、乃至はバス、タクシーを利用する以外アプローチの手段がないうえ 駅からの途中には目立つ商業施設が見当たらず魅力に乏しいのが実感です。郊外の商業施設が地域住民の消費を担い、街の中心部が廃れる「ドーナツ現象」が顕著に見られる地方都市の典型的な実例です。
津市は訪日観光客にとってもお世辞にも魅力的な場所とは言えないうえ、自治体として積極的にインバウンド誘致プロモーションに力を入れているようには感じませんので、今回のCOVID-19による打撃は相対的には(幸いにも)微小なものであろうと思われます。
隣接する松坂市と同様、日本の基幹国際空港の一つである中部国際空港から陸路・海路で60分、日本有数の観光地 伊勢神宮まで陸路30分の好位置にありながら観光客はこの地を素通りして点~点 に移動してしまい現状では津市に観光収入が齎されることは望めません、結果的に観光・飲食・サービス関連の働き口が乏しく、若い世代は街を離れ少子高齢化が進み増々魅力のない都市になってしまうネガティブスパイラルを危惧します。
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