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  • 執筆者の写真如風

COVID-19と国内観光地(伊勢・鳥羽)

更新日:2020年5月18日

(伊勢神宮/内宮とおかげ横丁)

第3章「シーズナリティ(季節波動)- 序章」でも触れたように日本人の旅の原点ともいえる「お伊勢参り」、江戸から片道460kmを徒歩でひと月近くかけてたどり着く「神の地」も今では鉄道、高速道路を使えば半日で到着できる身近な参拝・観光地になりました。

訪日観光客にとっても、伊勢神宮は日本旅行の人気目的地の一つで伊勢・志摩~熊野古道~高野山の定番ルートは世界各国の旅行サイトでもお薦めの観光コースになっています。

私の50年来の友人であるニュージーランド人の夫妻も一昨年このルートを辿り、それまでに経験したことのない「スピリチュアルな旅」ができたことに感銘を受けていました。

今回の春節期間中のフィールドワークでオーバーツーリズムの影響を大きく受けているであろうと予想していたのが伊勢神宮でした。

近鉄五十鈴川駅に着いたのは、2月中旬のウィークディ まだダイヤモンド・プリンセスの船内に3,000人以上の乗客、乗員の方々が検疫の名目で幽閉されていて、ニュースは連日増え続ける新型コロナウィルス感染者の詳細報道に凌ぎを削っていた頃です。その後3月9日から(3月末までの予定で)実施された中国、韓国からの入国者に対する14日間の自宅、指定施設での待機要請、発給済み査証の取消し令が発せられる前でしたが駅に降り立ったのは12名のみ、恐らく全員が日本人で訪日観光客の姿はありませんでした(12名のうちほぼ半数は地元の方で、観光客らしきは私を含めてほんの数名)。内宮行きの路線バスやタクシーも駅前のロータリーにありましたが、五十鈴川駅から猿田彦神社経由で神宮内宮まで徒歩で向かうことにしました。

駅から15分ほどで猿田彦神社に到着、境内に人の姿はなく玉砂利を掃く神職の衣ずれの音だけが境内に聞こえるほどの静けさでした。お参りを済ませて鳥居の近くで暫く待ちましたが結局参拝者は一人も現れず猿田彦神社はZEROオーバーツーリズムにて観察終了となりました。

その後、おはらい町~おかげ横丁を散策しつつ内宮へ向かいます。

流石におはらい町もおかげ横丁もそれなりに観光客の姿もあって賑わっていましたが、皆さんの財布の紐は固いようでどの店も冷やかしのお客様が出たり入ったりの繰り返しです。唯一の例外が、(ほんのひと月ほど前に不祥事で再び問題になった)赤福本店でした、午前11時にしてここはほぼ満席状態、立ち待ちの列ができていました。「敢えて待ってまで本店に座らなくとも」と思い 歩を進めて赤福内宮前支店まで行くとここは半分空席状態、どうやら直前にテレビのバラエティー番組で本店が取り上げられて放映されたばかりなので本店に観光客が押し寄せたようです。

結局、内宮の目の前で一皿220円也の赤福2つ+煎茶1杯セットをいただきました。

赤福

​五十鈴川にかかる宇治橋を渡り神苑、手水舎、五丈殿を過ぎていよいよ正宮にお参りです。普段であれば参拝者の長い列が続き正殿参拝まで20~30分程度並ぶのが当たり前ですが、この日は僅か3分ほどでお参りすることができました。ここにも訪日観光客の姿は全くありません、帰路 衛士の一人に「参拝者が少ないですね、外国人観光客が見当たりませんね。」と問いかけると「全く、ここまで人が少ないのは初めてです。今月(2月)に入って外国人が全然来ません。肺炎のせいでしょうかね。」とのことです。五十鈴川御手洗場でアジア人の一家族が写真を撮っていた姿が妙に新鮮に見えました。

(鳥羽水族館)

肩すかしの皇大神宮オーバーツーリズム実地調査を終えて、引き続き予定していた外宮での調査を取り止めて内宮前から直通バスで鳥羽水族館に向かうことにしました。予想通り乗客は私一人だけ、確かに路線バスで五十鈴川駅に戻り近鉄電車に乗り換えて鳥羽まで向かえば 40分弱で運賃も 530円、一方直通バスだと870円、その差 340円は直通バスを選ぶことを躊躇するに余りある額であることが証明された瞬間でした。

鳥羽水族館は 珍しいジュゴンの生態やラッコの餌付け、南米アマゾン川の巨大生物を求める国内外の観光客に人気がある国内有数の水族館です。鳥羽駅から徒歩でのアクセスも便利なため名古屋方面から志摩方面に向かう大型のスーツケースを持った観光客にとって絶好の途中下車観光スポットとしても知られています。しかし、結論から申し上げるとこちらも観光客の姿が消えて従業員が手持無沙汰な様子でした。館内を巡回していた女性従業員に「お客さんが少ないですね、特に外国人がいませんね。」と話すと、「そうなんですよ、このところめっきり外国からのお客様が来なくて。春節のお休みの時期は “水槽に触らないようにとか、列に並んでとか” 一日中お願いするんで今年は全く状況が違います。」とのこと。残念ながら(幸いにも)オーバーツーリズムの悪影響を目にすることはありませんでした。


チンアナゴ-鳥羽水族館

水族館を後にして鳥羽駅に向かって歩いていると、先ほど館内のフードコートで食事をしていたアジア系イスラム教徒のご夫婦と一緒になったので少し話をしてみました。

二人はインドネシア人で、ご主人は大阪で仕事をしていて休暇で紀伊半島を旅行しているとのことでした。人が少ないので旅行がしやすい、お店の人がすごく親切にしてくれると喜んでいたのが印象的でした。

この二人は訪日観光客ではなく在日就労外国人でしたので必ずしも外国人観光客の目線からの思いではありませんが、COVID-19の影響で“人が少なくて旅行がしやすい”環境が生まれたことは確かです。

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