• 如風

COVID-19終息後の航空業界 - (3)

フェーズ(3)- Operation Period

「人間は考える葦である」、然り「人間は忘れる芒である」。

草原いっぱいに生い茂る芒(すすき)は、風に吹かれれば一斉に同じ方向に穂を揺らし雨に当たれば首を垂れる、そして人は忘れることで苦痛から解放される知恵を授かった。


果たしてCOVID-19の完全終息までに世界中でどれだけの感染者が記録されるのか、何人の尊い命が奪われるのか、今この問いに答えられる人はいないでしょう。そしていつの日か、COVID-19は21世紀の歴史書の一行になってしまうのです。まるで今日の我々が15世紀のペスト禍を語るように・・・・


ツーリズム産業を包括して After COVID-19を自粛の終了、旅行の再開と楽観することは無意味なことです、何故ならばCOVID-19終息後の世界は以前とは異なったものになっているでしょうから。暫くの間、人々はクルーズ旅行を控えるでしょうし、「衛生」が旅行先を選ぶ際の優先順位の最上位になるかもしれません。それ以前に観光旅行で自国を離れること自体を躊躇する人もあるかもしれません。そのような中でも、航空会社は社会インフラの中枢としてその責任を果たさなくてはなりません。長かったCOVID-19禍を耐え忍び、長く暗いトンネルを抜けたフェーズ(3)、この時に世界中でどれほどの航空会社が生き残っていることでしょう。


ここからは、COVID-19の全面的終息後 即ちフェーズ(3)を迎えた時に航空業界がどのように社会に貢献しつつ業績を回復し、新たな時代に立ち向かっていかなければならないのかを考えてみましょう。


世界中で外出禁止、渡航制限が続いた結果、自家用車のガソリン消費量が減ったうえほとんどの航空会社の旅客便が欠航したことで、世界の石油消費量が激減しました。4月中旬には5月の原油先物価格が史上初めてマイナスになり、慌てたサウジアラビアとロシアがそれまでの対立姿勢を転換した結果、OPECは急遽原油の生産量削減(減産)に舵を切りました。

フェーズ(3)で日常が戻ったことで石油の消費量は上昇、市場原理に従って原油価格も徐々に値上がりし始めます、とはいえ価格上昇のスピードは産油国の思惑とは異なり緩やかなものになるでしょう。この緩やかな原油価格の上昇期は旅客便の運航再開を迎える航空業界にとっては非常に重要なファクターとなります。既に4月の中旬に原油減産が始まっていますので遅かれ早かれケロシンの価格も上昇に転じますので、短期間でも燃油コストを軽減できるこのチャンスに可能な限り営業利益を上げる必要があります。


各航空会社が保有するすべての飛行機が、一挙に稼働するとは思えず短距離・中距離・長距離各々に最適なサイズの飛行機が投入されなければなりません。残念ながら、COVID-19禍の陰に隠れて話題に上がらなくなったB-737 MAXは未だに商用飛行ができませんので、このサイズの飛行機としては、MAX以外のB737シリーズとA320シリーズが充てられるでしょう。又、特殊な路線を除いてA380が有効に機能するとは思えませんので各社はフリートのユーティリゼーションにかなり神経質になる必要があります。

結果的には、A350/380/320/321/330/340、B777/787/767/737、エンブラエルあたりに集約されるのではないでしょうか。


拡大基調にあった航空業界の姿がCOVID-19によって一瞬にして歴史上最悪な状況になったことで 航空会社にとって最も重要な資産である飛行機が、企業の業績回復の足枷になるとは何と皮肉なことでしょう。しかしここは、心を鬼にして余剰機材の退役・処分を加速して運航効率が良くて環境負荷の低い必要最小限の機材編成に組みなおすことが必要になります。国、地域によって需要の回復ペースは異なりますので最適なサイズ感は一言では表現しにくいですが 恐らく2019年12月対比で65%~72%が上限になるのではないでしょうか。削減する機材の座席数によって必ずしもイコールとは言い難いもののざっくりとASK比率でも同様の削減率になると理解してよいでしょう。


航空機の削減、即ちASKの削減はそのまま運航乗務員、客室乗務員の削減に結びつきます。更に整備、事務関連の従業員の削減も避けて通ることはできないでしょう。

何時の時代にあっても、いかなる業界、会社にとっても人員削減は苦しくて辛い決断です、しかしCOVID-19禍からの回復期には固定費、殊に人件費を可能な限り圧縮することが何よりも重要なことであり 固定費削減のタイミングを誤ると会社の業績回復はおろか、会社の存続そのものを脅かす可能性すらあることを深く認識する必要があります。

会社のスリム化、コストの削減に力を注ぐ一方で 将来に向けた投資を蔑ろにすることはできません。コスト削減の対極にある投資の最重要項目は言うまでもなく安全運航の保証です。

長かった渡航自粛、出張禁止、入国禁止から再び自由に飛行機に乗って旅行ができるようになったフェーズ(3)の段階で航空事故が発生してしまったら人々は再び家に閉じこもり自主的な渡航自粛を決め込み、それ以降客観的に空の安全が担保されて一人一人の人々が自ら納得して旅行を始めるまで航空業界は再び暗闇の中に埋没してしまうことになります。

万全の機体整備、安全運航や言うまでもなく、モラルの欠如による運航乗務員の飲酒問題などは航空各社の責任の下厳しくマネジメントされなくてはなりません。更に数か月の間離発着する航空機が激減してしまった主要空港の航空管制官を含む運行管理者のセーフガードも国、ICAO、IATAを始めとする業界横断的な援助と努力が不可欠になります。


フェーズ(3)を迎えて空の旅を始めるにあたり人々にとっての最優先事項は、先ず出発地から目的地に向けての直行便の有無でしょう。直行便重視の理由は、密閉された飛行機の機内での時間を極力短くするとともに、目的地への旅行が途中経由国の健康・保健レギュレーションに左右されないからです。乗客、旅行者の感染予防と同時に乗客、旅行者から第三者への感染を極力防ぐため国際線運航航空会社に課せられた社会的責任とは低減されたと認められた自国と相手国間のP2Pトラッフィックに暫時全力を尽くすことであり、他国間のP2Pトラッフィックを略奪的な価格で自国経由で強奪したうえ人々に感染症の危険を与えることのないように慎むべきであると考えます。

日本からスペイン-マドリッドに向かう旅行客にとっては、NRT-MADを直行運航するIB便が最優先の選択肢であるべきで、IB直行便があるにもかかわらず敢えてDBXやISTを経由して飛行機を乗り継ぐべきではないのです。平時には一致団結したかに見えたEU諸国にしても緊急時には各々自国優先に走りシェンゲン域内の往来すら制限したのですから敢えて欧州内のFRA、CDGで乗り継いで感染のリスクが比例して高くなる長時間の飛行機旅を提案する必要はないと考えるべきなのです。


運航機材を適正サイズに削減して、ASKを縮小、人件費を中心とした固定費を圧縮するとともに 安全運航を担保する上で重要な厳格なる航空保安対策の徹底が求められます。

COVID-19の陰に隠れて我々の日常の意識から遠ざかってしまった感のあるテロリズムの脅威は常に身の回りに存在することを忘れてはなりません。フェーズ(3)の初期には各空港における検疫強化に目を奪われがちですが航空テロ対策の要となるセキュリティ検査はいずれの国、地域にかかわらず最高レベルにまで引き上げたうえで厳格に実施される必要があります。


2020年は航空旅客が航空会社を選ぶ際のクリテリアを変えたエポックメイキングな年になると思います、即ち 提供される機内食や機内エンターテイメント、上級会員向けのラウンジの豪華さや宣伝広告よりも、目的地までの時間の短さ、機内における感染症の予防対策が重要な選択肢になることが考えられます。航空会社は、この度のCOVID-19禍を悲観するばかりでなくCOVID-19を機に航空運送の原点に立ち返り自助努力と自浄努力をして一日も早く消費者が安心して空の旅を楽しめる社会インフラとしての責任を果たすことを切に願っております。






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