• 如風

Go To トラベル・キャンペーン

最終更新: 10月13日

2020年7月10日、東京都では新たに243人の新型コロナウィルス感染者が確認されました。2日連続で過去最多を更新し、国内の感染者数も2万人を超えました。

同じ7月10日、政府は経済活動の再開を加速させる目的で、観光支援策「Go Toトラベル・キャンペーン」(GTTC)を当初の開始時期であった8月上旬から7月22日に前倒しして開始することを決定しました。

そもそも、Go To キャンペーンとは新型コロナウィルスの経済対策として政府が1兆6,794億円をかけて実施する旅行、飲食、イベントなどの需要喚起事業の総称です。事業のうち国土交通省・観光庁が担う国内旅行費用補助の「トラベル」、農林水産省が担う飲食需要喚起の「イート」、経済産業省によるイベントのチケット代金補助策「イベント」、商店街振興の「商店街」の各事業で、総予算は便宜上経産省に一括計上されたうえ、複数に跨る担当省庁の事務を一括して民間事業者に委託することを計画していました。ところが、委託事業者の公募が5月26日に開始されて間もなく、事務委託費の上限が3,095億円と高額であったこと、選定方法に疑問があることなどが国会内で問題視された結果、各事業ごとに委託事業者を公募することに急遽変更されました。

結局。GTTCの事務局の運営は「ツーリズム産業共同提案体」に委託され、事務委託費は約1,895億円になりました。


蛇足ながら、当初各 Go Toキャンペーンの事務局業務を一括して委託する事業者を公募する方向で経済産業省が動いていたものの、公募開始以前に約50社にヒアリングし そのうち直前の持続化給付金事業の再委託(一般社団法人サービスデザイン推進協議会が769億円が受注後に法人の設立母体である大手広告代理店に、749億円で再委託されていたこと)で問題となった大手広告代理店とは10回に及ぶ話し合いの機会を持っていたことが判明しました。この大手広告代理店は、各関連業務のエキスパートではないもののマーケティングに関しては日本屈指の会社であることは自他ともに認めるところですが、その実日本の政財界の重鎮の子弟が数多く在職することで「又、お友達優遇の政治の私物化」を疑う声があったことは記憶しておくべきでしょう。


キャンペーンの内容は、旅行費用の50%(日帰り旅行の上限が1万円、一泊旅行で2万円)補助、但し、支援額の7割が旅行費用の補助で残りの3割が旅行先で使える地域共通クーポンで提供されることになります。

前述の事務局選定に係るごたごたの所為もあってか、旅行費用の15%あたる地域共通クーポンは9月以降にならないと受け取ることが出来ません。


GTTCの7月22日実施開始が発表されるや否や、各旅行代理店は我先にと自社取り扱いの旅行商品をWeb上に掲載する一方、実施時期についての賛否両論がマスコミで連日報じられています。ここからは、GTTCの計画自体と実施時期について検証してみることにします。


1.GTTCの功罪

国土交通省・観光庁は過去にも災害で被害を受けた地方への国内旅行の需要喚起を目的とした数々のトラベル・キャンペーンを実施しています。その結果は、旅行商品を販売した旅行会社、自治体、宿泊施設、交通機関、旅行関連業界にとって好ましいものであったことは間違いありません。

この度の、新型コロナウィルス感染症で大きく落ち込んだ日本のツーリズム関連業界を日本人の国内旅行をGTTCで喚起することで援助することに対しては(成果は別として)好評価すべきだと思います。

一方で、補助金の割合を一泊当たり50%額にして2万円を上限としながら35%を旅行費用、15%を地域共通クーポンに分けたことが正しいのか、少々考えさせられます。勿論、制限を掛けずにおくと割引分が全て旅行費用・宿泊代に充てられてしまい、観光地での買い物消費がおろそかになってしまう危惧があることは十分に承知していますが、スキームとしては、旅行会社を窓口として1万円のトラベルクーポンを5千円で事前購入できるようにして、1千円券を10枚一綴りにして 宿泊施設、交通機関、観光地の提携商店、観光施設で金券として1千円単位で利用ができるようにしたらもっと使い勝手が良いのではないでしょうか。しかも、7月22日の旅行から補助金の対象になるにもかかわらず、15%分の地域共通クーポンは9月まで受け取ることが出来ず、それまでの旅行では15%の恩恵が受けられないとは・・・

更に、観光庁のガイドラインによると、旅行会社が販売する宿泊+交通機関のセットプラン並びに、往復の交通機関+旅先でのアクティビティがセットされた日帰り旅行などの募集型主催旅行の場合はパッケージとして旅行会社の利益を含んだ全旅行費用が割引の対象になりますが、個人手配旅行の場合の交通費は割引対象になりません。この不公平感、不透明感は何とかならないものでしょうか・・・


2.GTTCのタイミング

今最も問題になっているのが、「今、この段階でキャンペーンを始めるべきなのか!」。

私は個人的に、毎日発表される〝本日の新規感染者数〟など、一切信じていません、というのも、3月24日にIOCの判断によって2020東京オリンピックが一年延期になるまで都内の感染者数は限りなくゼロに近かったものが、翌25日には41名になり、小池百合子東京都知事は同日、都民に対して平日は出来る限り自宅で仕事をして、週末は不要不急の外出を控えるように要請を出しました。又、7月5日の東京都知事選前日までは一日当たり2桁台の新規感染者数が 翌6日以降急増して、一挙に3桁~200人超に跳ね上がっています。

日本人の感染確認第一号から7か月余りが過ぎて、感染抑制と経済の再開は「With Corona」で並走しなくてはなりません。小池都知事が、菅官房長官に売られた喧嘩に対して「冷房と暖房を両方つける」とか、「アクセルとブレーキを同時に踏む」と言って揶揄しているようですが、実は「With Corona」とは、感染症と共存(ブレーキを踏む)しながら、経済活動を再開(アクセルを踏む)することなのです。


残念なことに、マスコミの論調では圧倒的にGTTCの7月22日開始は〝時期尚早〟と非難されています。多くの地方自治体の首長(知事)達も口を揃えて、「今ではない!」を声高に訴えているように感じます。

私も、GTTCを7月22日に開始することには反対です、しかし 知事達が仰るようなコロナウィルスの他都道府県からの持ち込みに対する危機感だけではなく、実効性のある需要喚起・需要誘導の観点からの反対です。

国土交通省・観光庁の意見は、7月23日からの4連休に当ててキャンペーンを開始することを何より重視しているようですが、これは間違っています。今年は、春先の学校休校の穴埋めのために従来の夏休みを短縮して2週間程度の短い夏休みを決めているようですが、所詮日本人の夏季家族旅行は、7月23日からの3~4日間と、短縮されながらも8月中旬のお盆休みに集中することは明白です。加えて、今年の夏は海外旅行に出かける日本人が対前年比恐ら90%減程度まで落ち込むことでしょう、即ち、如何なる需要喚起策を講じなくともこの時期は日本人の国内旅行が活性化しないはずはないのです。にもかかわらず、この時期に的を絞るかの如くGTTCを実施することの意味が分りません。一層のこと、観光地で使えるショッピングクーポンの発行が開始される9月以降の旅行からGTTC割引対象として、繁忙期を外して中間期、閑散期に需要を誘導することで無から有を生むべきだと考えないのでしょうか。

9月以降に開始する旅行をGTTCの対象とすることで、旅行需要を分散させて感染予防の所謂「三密」を避けて繁忙期にも部屋数を減らして運営する宿泊施設をアシストし、本来空室が出始める中間期~閑散期に旅行客を増やしてこそ本来の施策なのではないでしょうか。


何れにせよ、今年中に訪日外国人観光客が戻ってくることはあり得ませんので国内のツーリズム関連業界を救済するためには、日本人の国内旅行に神頼みする以外に手段はありません。今まで年々右肩上がりに増え続けたインバウンドの数に踊らされてきた官邸、地方自治体、DMO、宿泊施設、観光関連施設が その陰で蔑ろにされてきた日本人の国内旅行者に縋る姿を見て800年前の日本人の人生観を改めて見る思いがします。「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあれ、沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢の如し。たけき者も遂には滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。」


官邸主導の Go To トラベルキャンペーンの成功をお祈りいたします。合掌


追記

このオピニオンを書いた7月15日段階では、東京を目的地とした旅行、並びに東京都民の旅行はGTTCの助成対象にならないことは発表されていませんでした。(除外規定)

加えて、キャンペーン開始が公表された7月10日から、東京除外の発表がなされた17日までの期間の予約がキャンセルされた際の旅行取消し費用の負担に関してのずさんな政府対応は、キャンペーン開始前日まで旅行者を混乱させました。因みに、7月22日現在、参加予定の旅行代理店、宿泊施設はGTTCの登録が出来ていません。




 



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