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  • 執筆者の写真如風

新型コロナウィルス感染再拡大と補助金不正受給の実態

2019年11月に中国武漢で初の新型コロナウィルス感染症の症例が報告されて以来およそ2年が経ちその間世界はあらゆる手段を講じて感染拡大を抑え込む努力をしてきました。

しかし残念ながら、2022年1月7日現在世界の新型コロナウィルス感染者数の累計は遂に3億人を突破してさらに日々増加の一途を辿っています。

日本国内においても同日1,741,837人の累計感染者数を記録し年明け以降新たなオミクロン株による急速な感染拡大が第六波を予感させています。

感染収束の目途が立たない状況下一時停止を余儀なくされたGoToトラベルキャンペーンは再開の目途も立たないまま未執行の予算1兆3千億円は宙に浮いたままとなっています。


そんな中 国内の複数の旅行会社による補助金不正受給が社会問題になっています。中でもH社(の連結子会社2社/M社、J社)によるGoToトラベル補助金不正受給の事実はその額の大きさとグループ会社ぐるみの悪質な不正により事はH社グループのみならず日本の旅行業界全体にまで悪影響を及ぼす可能性が出てきました。

事の発端はGoToトラベルキャンペーンの管轄省庁である国土交通省(キャンペーン事務局)が2020年に実施した同キャンペーンの実施内容の精査を2021年10月に開始したことです。精査はキャンペーン参加者に対するアンケート&ヒアリングを通じてキャンペーンの効果、地域格差を可視化することで今後のキャンペーン再開に際しての参考にすることを目的としたものです。

国土交通省(キャンペーン事務局)の動きを察知したH社は、12月8日に自社が独自に設置した(外部識者による中立性の担保された)調査委員会なるメンバーによる調査を(12月9日から12月23日までの期間)実施し 2021年12月24日に調査委員会から調査報告書を受理したとして「当社連結子会社における取引に関する調査委員会からの調査報告について」なる文書を公表しました。そして同日の調査委員長(弁護士)の記者会見には、同社のS氏、Y氏、更にN氏とO氏(問題となっている連結子会社J社の役員を兼務)が同席しています。


今回の、H社連結子会社2社(M社、J社)によるGoToトラベルキャンペーンの補助金不正受給は各々の会社がJH社(宿泊施設運営会社)と個別の宿泊契約を結び架空の宿泊実績に基づいてキャンペーン事務局に補助金申請をして補助金(宿泊代金の35%と地域共通クーポン15%)を不正取得したとされたもので、その手法は複雑なものであり詳細は今後刑事事件として追及され白日の下に晒されるでしょうからここでは深追いすることは避けたいと思います。とは言うものの、12月24日に公表された調査委員会の報告書並びに同日の記者会見を見ても納得できない点が多々あることも否定できません。


疑問その①

2021年12月24日付け、株式会社H社調査委員会による調査報告書(要旨)の6項、調査の前提と限界に次のように書かれています。

当委員会による調査は関係者の任意の協力に基づいて実施されたものであり、調査の実効性は、関係者の協力度合いの影響を受けざるを得ず、関係者に対するヒアリング内容の真偽を確認する手段についても限定されている。


これは平たく言えば、補助金不正受給に直接的・間接的に関係したと疑われる関係者であろうと委員会は任意の協力をお願いして調査したものであり非協力的な関係者に対する調査では実効性を担保するものではない。又、ヒアリングの内容が偽証(嘘)であったとしても罰則規定はなく委員会の権限で真偽を確認するすべはない。

と言うことは、仮にH社と当該連結子会社の取締役を兼務している人物が、「架空宿泊契約並びに、それに基づく補助金不正受給に関しては当該子会社の代表取締役社長の一存で実行されたことであり(親会社から派遣され子会社の経営を把握する立場にあり、億単位の契約に当たっては必ず承認する立場にあるべき)自分は一切知らなかった。」と責任を回避した場合でも、その真偽を明らかにすることが出来ないということです。


同様に、調査対象となった関係者が「子会社が手を染めた補助金の不正受給は子会社が勝手に行ったことで 親会社は一切関知していないし、法的責任も道義的責任も一切ない。」と述べた場合は、それを鵜呑みにして「親会社の関連は認められない。」と報告書

に記載するしかないということです。


疑問その②

12月24日にH社から調査報告書が公表されるとJH社は早速声明を発表、「当社はヒアリングを一切受けておらず当社の見解が全く反映されていない。非常に困惑しており不満を感じている。」と述べている。


これは即ち、客観的に関係があるとみられる、H社の連結子会社2社とJH社のうち連結子会社2社に対してのみヒアリングを行い、もう一方の当事者であるJH社は蚊帳の外に捨て置かれた、と言うことに他ならない。これでは、「悪いのはJH社であり、M社とJ社は従属的な立場でしかない。」と調査委員会に証言したとすればJH側に反論の余地はなく一方的な証言が事実として報告書に記載されてしまう。


過去数年の間に政治の舞台を騒がせた某氏の「逃げ手」即ち、「私や私の家族は一切関知していない、悪いのは秘書、政治団体の担当者、会計担当者、ホテルの担当者。」が経済界にまでその黒い手法として浸透してこないことを切に願うところです。

合わせて、当該疑わしき当事者が自ら設置した調査委員会の報告書に依るところなく、刑事事件として客観的な視点から深部にまでメスを入れて正義を正してもらいたいものです。







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