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  • 執筆者の写真如風

新型コロナウィルス感染拡大とGo To トラベル・キャンペーン

更新日:2020年12月18日

師走を迎え何かと慌ただしい季節になりました。例年であれば各地の師走の行事が報じられクリスマスから新年にかけての気分が盛り上がるはずなのですが、今年はそのような盛り上がりはなく新型コロナウィルス関連の報道ばかりが報じられる殺伐とした年の瀬になっています。最新(2020年12月16日)の国内感染者数は、18万4,876人、死者数は2,702人に上ります。世界に目を向けると感染者数は7,286万9,705人、死者数は162万1,635人と報じられています。

そんな中、日本政府は感染拡大阻止や医療機関の負担軽減を目的として現在継続中のGTTCを近々全国一斉に停止することを決定しました。

(略引用)

既に地域独自の危機管理対策として11月24日から12月15日までの期間、両市への到着分のGTTC新規予約を一時停止(補助対象外)していた札幌市と大阪市(両市民の利用自粛は11月27日から12月15日)、12月2日から12月17日までの期間65歳以上の高齢者や基礎疾患のある人の発着利用自粛を要請していた東京都に加えて名古屋市も12月27日までは到着分のGTTC新規予約の一時停止と出発分の利用自粛を要請、更に翌12月28日から2021年1月11日までの期間は全国でGTTCの補助対象外としてキャンペーンの一時停止を決定しました。


周知期間をとるために、4都市(札幌、大阪、東京、名古屋)を目的地とする既存の予約(12月14日24時時点)については12月22日から27日に出発する旅行に限ってGTTC補助対象外扱いとされました。(東京都のみ12月18日から27日分が補助対象外)

一方キャンセル料に関しては、12月24日までに申し出れば4都市を目的地とする27日までに出発する旅行は免除の対象となり、同じく24日までの申し出で12月28日から1月11日を旅程に含む全国の旅行についてもキャンセル料はかかりません。

注)12月28日チェックアウトの旅程は、GTTCキャンペーンの補助対象として成立します。


上記の内容は、12月15日の朝日新聞朝刊、並びに観光庁のホームページに記載された最新の情報を基に少なくとも一般人に分かりやすいように若干の手直しをして編集したものです。

一度読んだだけではこのキャンペーンの変更・更新情報を完璧に理解することは困難だと思いますが、4都市の感染状況に関する各々の認識の度合いの差と各自治体と政府の見解の相違、更に目的地・発地の視点の相違、直前での方向転換など複雑に絡み合った要素を纏めた結果が12月27日までに出発する旅行の取り扱いを煩雑なものにしてしまったと思われます。

何れにしても、年末年始の旅行繁忙期の国内旅行を政府肝いりのGTTCの補助対象から外すことで年明けの感染者数をできる限り低く抑えようとする感染症対策専門家と世論の高まりに政府が断腸の思いで折れた形になったと理解できます。


裏を返すと、政府官邸は今年末年始期間の旅行をGTTCの補助対象から外すことで予定していた旅行のキャンセルを想定して期間中の人の動きを抑制しようと目論んでいるわけです。と言うことは、2020年下半期の日本人の国内旅行需要の高まりはGTTCと言う砂上の楼閣によって支えられてきたイリュージョンだったのでしょうか?GTTCが無かったら日本人は国内旅行に出なかったのでしょうか?

答えは恐らく「YES」でしょう・・・

振り返ると、ほんの一年前2019年までの約数年間、増え続けるインバウンドの波に踊らされ「訪日観光客」を成長戦略の主軸に祭り上げた政策、「インバウンドさえ途切れなければ」と媚びていた割に想定を超えた「訪日観光客」をオーバーツーリズムと非難した有名観光地、「国内富裕層と富裕層インバウンド」にのみフォーカスしたインターナショナル・ブランド・ホテルや廃業施設再生活用高級リゾート等々日本人国内旅行者をその対応と価格で放逐したことで日本人は高額で高飛車な国内旅行からリーズナブル(費用対効果の高い)でホスピタリティーに溢れた海外旅行へと購入可能目標を変えてしまったことに誰も気がつかなくなっていたのです。

一度築いてしまった崩すことの出来ない「ブランドイメージ」が「高価格」であると勘違いしているホテルオーナー達のポリシーではとても手が届かなかった一般的な日本人が「COVID鎖国令」によって海外への道を閉ざされたことに加えてGTTC35%割引を目にしたことで一挙に国内ハイエンド旅行に流れ込んだとしても不思議はありません。

一率35%(プラス15%の商品券)の割引率、最大20,000円の割引金額はかなり魅力的で、誰しもこのベネフィットの際上限を狙って普段であれば(富裕層以外)ページすら開かない一泊4万円以上の宿を検索しまくったのです。

ここで私は声を大にして言いたい!

どこか浮世離れしたホテル経営者が、「マイクロツーリズムで一度当館を訪れてくれたお客様に再訪していただける。」と大見得を切っておられるようですが、現実は一般的な(富裕層ではない)宿泊客の支払い上限は20,000円人/泊ですから。

と言うことで、日本人にとって国内旅行は高根の花、個人手配旅行の交通費や自家用車の高速道路料金も含めた30%値引き後の金額こそが一般家庭の許容範囲であることを政府、地方自治体、高額(高級・高品質ではありません)ホテル経営者の皆さんは認識することで再び訪れる危機に対応する「Crisis Management」の一助としていただきたいと思います。


2021年の上半期は、GTTCが復活したとしても旅行観光業界にとっては厳しい冬が続くことでしょう、しかし下半期には地域限定ながら海外旅行が息を吹き返すとともに訪日観光旅行の一部解禁によって少しずつ国内の宿泊施設も客室稼働率・客単価ともに上昇に転じるでしょう。その時、あの2020危機を救ったのが日本人の国内旅行者であったことを忘れないでいていただきたいものです。


今回のGTTC一時停止が感染拡大の抑制に寄与することを願って止みません。




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