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  • 執筆者の写真如風

オーバーツーリズム - (2)

更新日:2020年3月22日


前章 オーバーツーリズム - (1) では、オーバーツーリズムをQuality(質)とQuantity(量)の両側面から見てきました。前章だけで呟きを終えてしまいますと、「・・・・・それで?だからどうすれば良いのかまでは呟かないの?所詮、問題提起でお終いなんだ。」と、お叱り、ご指摘を受けることでしょう。

今章では、オーバーツーリズムを回避しつつ同時に継続的、且つ建設的な観光プロモーションを実現するための方策を世界の成功例を参考にしながら考えていきましょう。

世界に目を向けると、「オーバーツーリズム」に苦しみそれを解消するために様々な手段を講じる観光地が増え続けています。

ある町は、入域する観光客から税金を徴収、別の観光地ではレストランの屋外テラスでの営業を禁止したり、大型クルーズ船の入港を制限したりと ”昨日の誘致から今日の拒絶” へと観光政策を180度転換し始めているのです。これらの街や観光地はほぼ例外なく過去の一点集中型の ”点~to~点”プロモーションで観光誘致に成功した実績を積み重ねた結果、現在(そこまで増えるとは思っていなかった)「オーバーツリズム」に苦しんでいます。

それでは、”点~to~面+質” 観光プロモーションとは実際どのようなものなのでしょうか、”点~to~面+質”観光プロモーションの稀有な成功例としてドイツの「ロマンティック街道」の実例を見てみましょう。


​ロマンティック街道はドイツ中部のヴュルツブルクから南部のフュッセンまでの南北約400㎞の街道で、街道沿いに点在する中世の都市や、古城が観光客に人気です。「街道」と呼ばれることであたかも点と点を繋ぐ線のプロモーションのように感じますが 否ここを訪れる多くの旅行者は街道から10Km~20Km程度離れた町や村を宿泊、食事先にしながら数日間かけながらゆっくりと中世の雰囲気を楽しむのです。中には世界的に有名な古城、ノイシュバンシュタイン城や古都ローテンブルクなどのスーパー観光地がありますが いかんせん400Kmの範囲に見どころが散らばっているため一極集中のリスクはかなり軽減されることになります。

更にロマンティック街道の魅力の一つが起点と終点に大規模な国際空港があることで 南行/北行双方向からの観光客を受け入れることができるため一方方向だけに向けての集中を軽減できるメリットがあります。

南行の起点となるフランクフルト、デュッセルドルフ、北行の起点となるミュンヘンはそれぞれ世界各国と直行便で結ばれいてアクセスの面からハードルの低いゲートウェイとなっています。

元々公共交通機関が整備されていなかったロマンティック街道は1970年~1980年代は海外からの旅行者にとって必ずしも行き易い地域ではありませんでした。しかし、この街道の魅力がポテンシャルに満ちた地域であることを官民が共通認識することで旅行者にとって非常に便利な周遊バスの運行が始まり加えて地域の既存の素材を生かした生活密着型の”おもてなし”を提供することで体験型ツーリズムを実現することができるようになったことで旅行客の満足度が大きく伸びたのです。

ここで見逃してはならないのが、(官)即ち地域の自治体、ドイツ政府観光局、地方の観光振興団体と、(民)地域の住民、サービスプロバイダーが一体となって地域の発展のため、観光誘致に積極的に取り組んだマーケティング/セールス/オペレーション三位一体の活動でした。

(官)は巨額の資金を投じてブランディングを推し進める一方旅行者に必要不可欠なインフラを整備し、世界中の旅行会社に対してワークショップやセミナーを通じてプロモーションを行い、方や(民)はその地での宿泊の有無に拘わらず魅力的な観光素材を日常生活の中から掘り出して磨き上げることで持続性を確保、バス会社は周遊運行に当たって国際空港を起点・終点にすることで旅行者の利便性を向上させることに成功したわけです。

如何ですか? 南関東のK市からZ市~M市~Y市 ~海の楽園 v.v. で乗り降り自由な4日間周遊バスを5,000円で販売してみては?

松阪

近い将来、改めてオーバーツーリズムと観光誘致について呟いてみたいと思います。

ここまでお付き合いいただき有難うございました。

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